2013年12月5日木曜日

株主総会議事録の閲覧と取締役会議事録の閲覧について~閲覧・謄写の権利と制約~

日比谷ステーション法律事務所の弁護士田原です。

 株式会社が会社としての意思決定をする手続きの一つとして、株主総会や取締役会における議論と決議が必要となりますが、株主総会や取締役会の議事と決議に関しては、法律上、議事録を作成し一定期間備え置くことが義務付けられています。
 そして、株主・債権者・親会社社員については、それぞれ一定の条件の下で議事録の閲覧・謄写を行う権利も認められています。

株主総会議事録の閲覧・謄写に関する法律の定め

 株主総会の議事録については、会社法第318条が以下のように定めています。

会社法第318条
第1項 
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
第2項 
株式会社は、株主総会の日から10年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
第3項 
株式会社は、株主総会の日から5年間、第1項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第2号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
第4項 
株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 第1項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求
二 第1項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
第5項
株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第1項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。


取締役会議事録の閲覧・謄写に関する法律の定め

 取締役会の議事録については、会社法第369条第3項及び第371条が以下のように定めています。

会社法第369条
第3項 
取締役会の議事録については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

会社法第371条
第1項 
取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から10年間、第369条第3項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
第2項 
株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
第3項 
監査役設置会社又は委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
第4項 
取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第2項各号に掲げる請求をすることができる。
第5項 
前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
第6項 
裁判所は、第3項において読み替えて適用する第2項各号に掲げる請求又は第4項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第3項において読み替えて適用する第2項の許可又は第4項の許可をすることができない。


両議事録の閲覧・謄写請求に対する制約の有無

 株主による株主総会議事録の閲覧・謄写の権利についてみると、株主は、株主総会のあった日から10年間、会社の営業時間内であれば、何らの制約なく株主総会議事録を閲覧・謄写することが権利として認められています。

 他方で、株主による取締役会議事録の閲覧・謄写の権利は、権利を行使するために必要であるときのみに認められ、しかも、監査役や委員会が設置されている会社の場合には裁判所の許可を得なければ閲覧・謄写の権利が認められていません。
 これは、取締役会の議事には秘密を要する事項も含まれている可能性があり、各株主に自由に議事録を閲覧・謄写することを認めると会社全体の利益を害するおそれがあり、他方で監査役や委員会が設置されている会社にあっては、それらの監査役等が適切に取締役会を監視することが期待できるとの考えに基づいています。
 そのため、監査役や委員会が設置されていない会社においては、株主は権利を行使するために必要であれば、裁判所の許可を得ることなく、取締役会議事録の閲覧・謄写をすることができます。
 他方、監査役や委員会が設置されている株式会社においては、株主は裁判所の許可を得て取締役会議事録を閲覧・謄写する必要があり、裁判所に対して「取締役会議事録閲覧謄写許可申立」を行うこととなります
 同許可申立は、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に対し、申立書に手数料として1000円分の収入印紙を貼付して申し立てます。


日比谷ステーション法律事務所では、株主総会議事録や取締役会議事録の閲覧・謄写に関する法律相談を常時受け付けています。
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