2013年12月12日木曜日

株主による会計帳簿閲覧謄写請求と計算書類閲覧請求

日比谷ステーション法律事務所の弁護士田原です。

 株主が会社の資産状況や財務状況を知りたい場合、会社に対して会計帳簿の閲覧・謄写や計算書類の閲覧を請求する権利が認められています。


会計帳簿の閲覧・謄写請求

 まず会計帳簿の閲覧・謄写については、会社法第433条第1項が次のように定めています。

<会社法第433条第1項>
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
 
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求


 閲覧・謄写の対象となるのは、「会計帳簿又はこれに関する資料」です。

 ここで「会計帳簿」とは、計算書類及びその附属明細書の作成の基礎となる帳簿のことを意味し、具体的には、日記帳、仕訳帳、総勘定元帳及び各種の補助簿(補助記入帳や補助元帳)、伝票を仕訳帳に代用する場合の伝票等を指します。
 

 また「これに関する資料」とは、会計帳簿の記録材料となった資料や会計帳簿を実質的に補充する資料を意味し、伝票、受取書、契約書、信書等を指すものと理解されています。


 株主からの会計帳簿閲覧謄写請求に対し、会社は次のいずれかに該当する場合を除き、閲覧謄写の請求を拒むことはできないこととされています(会社法第433条第2項)。

  1.  請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
  2.  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
  3.  請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき
  4.  閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
  5.  請求者が過去2年以内において閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき

 取締役が正当な理由なく株主からの閲覧・謄写請求を拒絶した場合には、過料に処される場合があります(会社法第976条第4号)。
 
 
 
 
 
計算書類の閲覧請求
 
 計算書類の閲覧・謄写については、会社法第442条第3項が次のように定めています。
<会社法第442条第3項>
株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第2号又は第4号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
 
 

 
 閲覧等の対象となるのは「各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書」と「臨時計算書類」です。

  
 ここで「計算書類」とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を意味します。 
 

 
 会計帳簿の場合と異なり、株主からの閲覧請求に対する拒否事由が法律上定められていませんので、会社は株主からの閲覧請求があった場合には、これに応じなければなりません。

 取締役が正当な理由なく株主からの閲覧請求を拒絶した場合には、会計帳簿の場合と同様に、科料に処される場合があります(会社法第976条第4号)。
 

株主からの閲覧請求等に会社(取締役)が応じない場合の訴訟

 株主からの会計帳簿の閲覧・謄写請求や計算書類閲覧請求に対し、会社が正当な理由なくこれを拒否する場合には、裁判所に訴訟を提起して閲覧等を求めることができます。

 また、正当な理由なく閲覧等を拒絶する取締役に対しては、損害賠償を請求する訴訟を提起することも可能です。


 なお、会社の業務や財産の状況を調査する方法としては、公正な検査役の選任を裁判所に申し立てる手続もあります。

 会社の業務・財産状況を調査するための検査役選任申立についてはこちらの記事をご覧下さい
 
 →http://hsloffice.blogspot.jp/2013/12/blog-post_24.html


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